国際事務、現場社員のモチベーションの低さと実力の限界

ある独立行政法人に、派遣社員として国際事務の仕事に携わりました。仕事内容としては、中国語による統計作成、データの集計、白書の翻訳、中国語による統計の説明文の作成などです。中国本土、台湾、香港すべてのデータを集計してまとめ、サイトに日々アップする作業も行っていました。

この仕事の募集要項を見て説明を受けた際、重視されるのは中国語の能力はもちろんのこと、パソコン全般に渡る実務経験と知識も求められました。国際事務ということで日本語で行うパソコン処理を、仕事現場で使う言語にも対応できることが求められていましたので、それなりのレベルが求められた仕事だと思います。そして職場の人達との意思疎通も難なくできるか、ということも再三問われましたので、今にして思えばその部分が募集する側でも懸念材料だったのではないかと思います。

実際に就職した後に分かったことは、職場は完全な大組織で成り立っている会社なので、毎年の人事異動によって人の動きがすさまじく、同じ部署に定着して仕事を続けている職員を探すほうが大変でした。つまり、私の配属された部署も、中国エリアの担当でしたが肝心の中国語を使用して仕事ができる人がほとんどいなく、翻訳を含め雑用のようなものもアウトソーシングに頼っている状態でした。私の処理した仕事でさえ、職員の最終チェックや確認がままならず、結局誰に何を教わればいいのかなども曖昧にされた状態でした。

問題は、私のした仕事がウェブや白書の統計として記載されるということで、データの数字の正誤の確認は当然ですが、そのデータのもととなった情報源の解説文を共に確認したり話し合うということを現場の職員ができず、組織によくある「見ないふり」や「派遣にやらせたから」という空気が蔓延していたため、非常に居心地が悪かったです。のちにロシア語圏やスペイン語圏に所属していた派遣社員の人達からも同じようなことを聞き、非常に驚いた記憶があります。政府組織の一環として、職員がこのような意識を持ちながら白書や統計を発表してもいいのか、と常に疑問に思い、更に職員の仕事に対する姿勢にも不満を持つようになり、悪循環となりました。

しかしその「悪循環」は、裏を返せば職員の人達自身が自分の身を守るために、私のような派遣社員を雇い、仕事に対する不満や支障を抑え込み(上層部へ伝わらないように)、うまくやっていくという一つの手段だったんだな、と思っています。一概に彼らを責める気はありませんが、私としては世に出回ってしまう統計情報などを現場の職員が責任を持ってやらない(できない)ということにある種の怖さを覚えました。翻訳のアウトソーシングにも限界があり、しかも翻訳代行会社を選ぶ基準が価格の安さだったため、仕上がった内容も目を見張るものがありました。

独立行政本陣ということで、私自身もレベルの高い環境でしっかりと仕事ができると期待していましたが、実際は職員が保身のために派遣社員を雇っていただけでした。国際事務という、それなりのレベルの仕事ができ非常に良い経験になると思っていましたが、現実はやはり厳しいものがありました。会社の名前と組織の大きさに様々な想像を膨らませてしまった自分が恥ずかしかったです。求人の際の求められたスキルや経験は、結局ほとんど活かされないまま契約満了を前に退職しました。この会社はそれぞれの部署で常に派遣社員を募集しているので、あまり派遣社員が定着しないようです。毎年人事異動はあるものなので、このような問題はなかなか解決されないものだと思います。しかし私にとってはとてもいい経験となり、それが今日までの仕事の選び方や仕事の仕方に大きなメリットとなりました。